小瀧千佐子 活動40周年記念
「アートと、うつわと、花入れと – 近代ガラスの礎、ムラーノガラスを見つめて」
4月24日(水)~5月7日(火)in 日本橋三越本店
4/24(水)~5/7(火)の期間、日本橋三越本店にて開催されるイタリアフェアに、日本で初めてのムラーノガラス(ヴェネチアングラス)の専門店としてスタートした、〈chisa/チサ〉が出展する。
〈chisa/チサ〉は、コスチュームジュエリーとムラーノガラスの研究家、蒐集家として活躍中の小瀧千佐子氏が総合プロデュースをつとめるブランドだ。
現在は自身が監修を務め、多くの所蔵作品を提供しているコスチュームジュエリーの展覧会が全国の美術館を巡回中、好評を博している。
彼女がプロデュースする北参道のサロン〈chisa/チサ〉は、きらきらとしたガラスやジュエリーが上品に並び、まるで誰かの大切な宝箱の中に入りこんでしまったような空間だ。
今年は、小瀧氏の活動40周年にあたる年ということで、原点に立ち返ってハンドメイドの『ガラス』というアートジャンルにフォーカスし、ムラーノガラスと、彼女と親交のある日本のガラスアーティストとの競演が実現した。
ガラスのアーツ・アンド・クラフト
ムラーノガラスとは、北イタリア、ヴェネチアの小さな島、“ムラーノ島”でごく限られた職人の手によって一点一点生み出される「炎の芸術」である。
約1000年に渡り受け継がれてきたガラス工芸品は、ヴェネチアンガラスとも呼ばれ、土地の名前が入ったイタリアの伝統工芸品といえる。そして、近代ガラスの技術全般、アートガラスの礎を築いたのは、このムラーノ島と言っても過言ではない。
ヴェネチアがまだ、ヴェネチア共和国というひとつの国だったころ、資源の少ない共和国にとってガラス工芸は重要な交易品であり、貴重な国の財源だった。
その高度なガラス技法が国外に流出することをふせぐために、共和国政府はすべてのガラス職人とその家族たちをムラーノ島に幽閉し、逃亡すれば重罪、逆にガラス技術の発展に貢献すれば、職人ながら貴族と同位のエンブレムが共和国政府より与えれるという、飴と鞭の政策のもと、次々と新しい技法が開発された。
そしてムラーノ島のガラスは、ヨーロッパ王侯貴族の垂涎の的となり、世界のガラス史上に燦然と輝くこととなる。
かつては門外不出だったムラーノ島のガラス技術は、時代の流れと共に世界に広まり、日本でも多くのガラス作家が誕生した。元来モノづくりを得意とする日本人がガラスの技術を磨いた結果、現在はムラーノの職人と遜色ないレベルと言えるだろう。
しかし、ムラーノの人々が代々家族だけで継承してきた、長い歴史と文化は他のそれとは比べようがない。当たり前のようにガラスと共に生き、暮らしてきた時間が作品には表れているように思う。
ゆえに今でもムラーノ島は、世界中のガラス作家にとって特別な場所であり、畏敬をこめて「ガラスの島」と呼ばれている。
ムラーノガラス×現代日本作家
今回の日本橋三越のイタリアフェアでは、小瀧千佐子氏の40周年を記念して、小瀧氏が信頼を寄せる日本のガラスアーティストの木越あい氏、広沢葉子氏、大木泉氏、彫金作家の小西翔子氏の作品も出品される。
ガラスアートのファンにとっては見逃せない機会となるはずだ。
木越 あい
1964年、東京生まれ。
幼少期からお絵かきや工作が大好きで、美大に進学することを早々に決意。当時の日本で唯一、ガラスが学べる大学であった多摩美術大学に入学した。学部の卒業制作から、板状の多重の被(き)せガラスに、サンドブラストで自作の物語、「おはなし」を描くようになる。
ガラスの表面に色が何層も重なるように自身で宙吹きし、冷ましてから、細かい彫りでグラデーションを生み出す作風は、じっと眺めていると、まるで彼女の見ているカラフルな夢の中に飛び込んでしまったような感覚になる。
広沢 葉子
ガラス・アーティスト。イタリア語で春の草花を表す「プリマヴェーラ、フィオーレ((Primavera, Fiore)」、そしてパラダイスの語源ともなった古代ペルシャの宮廷庭園であり理想郷の「パイリダエザ(pairidaēza)」などをモチーフに、金箔や銀箔で装飾を施した飾壺・杯・器などを制作。特に茶器は多くのファンを持つ。
その独特な文様は、更紗、ペルシャのような雰囲気を持つが、色合いを含め日本の暮らしに心地よくなじむ風合いがある。
吹きガラスを心から愛する気持ちが表れたようなフォルムは実に魅力的で、眺めていると、どこか癒されるような、優しい美しさを持つ。
大木 泉
東京都出身、ミラノを拠点に活動するガラス・アーティスト。イタリア、日本にとどまらず世界各国で多くの個展やグループ展に作品やインスタレーションで参加する。
主に、“透明性”と“反射”、二つの性質を持つ工業用ガラス板で作品を発表し続けている。無機質なガラスを何層にも重ねることにより見えてくるのは、「時間」「風景」・・・作品の印象が、それと対峙する人の中で繊細に変化していくことが魅力的だ。
インスタレーション作品のほかにも、建造物や街並みにとけ込む作品から、アクセサリーや小さな動物オブジェなど発表作は多岐にわたる。
小西 翔子
1948年 熊本を拠点に活動するのジュエリー・アーティスト。女子美術大学芸術学部油絵科卒業後、田崎真珠に入社するも、銀に惹かれ「ヒコ水野 彫金教室」にて、彫金を学ぶ。
草花、動物、昆虫等、自然に生きる万物の美しさを、ありのまま、繊細に表現する作風で、銀や石のハードさを、優しく、奥ゆかしく包み込むようなデザイン性がとても上品で魅力的である。これまで小瀧千佐子とのコラボレーションにより、ムラーノガラス、ヴェネチアンビーズを使用した作品を数多く発表している。
そしてもちろん、イタリア、ヴェネチアのムラーノ島の工房からも多くの作品を紹介する。本展初公開となる作品や、人気のシリーズの再販もあるので、ぜひ会期の早めに足を運びたいところだが、1点ものが多いため、気になる作品は事前に連絡しておけば取り置きの相談も可能だ。
ムラーノガラスのオーダーメイド
40年間にわたりムラーノガラスを日本に紹介し続けてきた小瀧氏と、ムラーノガラスの職人たちとの信頼関係は確たるものがある。
〈chisa/チサ〉では、ただムラーノガラスを輸入販売するだけではなく、日本の食卓でも使いやすいように、小瀧氏がデザインしたテーブルウェアや花器を工房にオーダーしオリジナル作品の制作も多く行っている。
職人のもとに通い続け、ムラーノガラスの特性や製法、工房ごとの特長に理解を示すからこそ、まだまだ閉鎖的なムラーノ島で日本独自のオリジナル製品を創り出すことができる、日本で唯一のブランドだ。
その強みを生かし、近年はオリジナルのムラーノガラスのオーダーメイド事業にも尽力している。特に、コロナ渦以降、自宅へのこだわりを持つ層が広がったこともあり、鏡、シャンデリアなどの動きが活発だそうだ。
大きな買い物となるインテリアにおいて自宅にぴったり合うものを探すとなると、なかなか既製品では難しい。広さや間取り、雰囲気など、デザインから相談を受け、オーダーから納品までを手掛ける。
ムラーノガラスはクリスタルガラスとは異なり、色彩の豊かさと柔らかなフォルムが特徴的だ。優しいガラスのインテリアが家にあるだけで癒されると、ムラーノガラスの需要は増え続けている。
日本橋三越のイタリアフェア中にオーダーメイドの相談をすることも可能とのことなので、インテリアを検討中の方は要チェックだ。
小瀧千佐子40周年記念
アートと、うつわと、花入れと
-近代ガラスの礎、ムラーノガラスを見つめて
【会期】
2024年4月24日(水)~5月7日(火)
【場所】
日本橋三越本店 本館5階 スペース#5
【詳細】
〈chisa/チサ〉Webサイト
【お問合せ】
TEL:03-6455-4546
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小瀧千佐子より、開催によせてのメッセージ
棚に並ぶ、赤や青の薬瓶、白熱灯で優しく光る玄関のランプ、キラキラ光るガラスの簪(かんざし)。
子供の頃から、なぜかガラスに強く惹かれました。
特に温かみがあり、職人さん手作りの気配が宿るものが好きです。
新卒でフランスの企業に就職し、お給料で自身の気に入るものをポツポツと買いはじめますが、日本に帰るとガラス工芸はすべて形がきれいにそろったクールなものばかり。私が欲しい物がありません。そんな中、ムラーノガラスの衰退を嘆く新聞記事を見つけ、居てもたってもいられず退職し、小さなムラーノガラスの専門店を始めたのが1983年のことです。
ムラーノ島に飛び込み、自分なりに必死に蒐集、研究してきましたが、やはり近代ガラスの礎はムラーノガラスに他ならないと私は考えています。
現代の日本では、ガラスはどのように美しく輝くのでしょうか? そして、日本にはどんな素晴らしいガラス作家さんが誕生したのでしょう。
今回は40周年の節目として私の信頼する日本人作家さんもお招きし、テーブルウェアは勿論、オブジェ、花器、コスチュームジュエリー、鏡、そしてシャンデリアに至るまで、幅広く「私の大好きなガラス」をご紹介いたします。
小瀧 千佐子