革新と芸術性を体現してきたジェイコブ&コーの歩みを、シリーズ形式でご紹介する「Jacob&Co. STORIES」。第3回では、クオーツからハイコンプリケーションへと踏み出した転換期を紐解きます。
ファッションアイコンから“本物の時計師”へ

2000年代初頭。世界の富裕層やセレブリティの腕元を席巻したのは、ひときわ目を引く存在感とポップなカラーリングで構成された「ファイブタイムゾーン」。ニューヨークの6×6フィートの小さなブースから始まったブランドは、瞬く間にグローバルな注目を集め、ファッションとジュエリーを融合させた時計ブランドとして確固たる地位を築きました。しかし、その成功の只中にいた創業者ジェイコブ・アラボは、早くも次のステージを見据えていました。
「私たちの目標は、ただ美しい時計を作ることだけではない。本当の意味で“すごい”時計を生み出すことです。」
この信念のもと、ジェイコブ&コーは“美”だけでなく“技術”においても人々を魅了する、全く新しい挑戦へと踏み出します。
革新の第一歩――初の複雑時計の誕生
2006年、ジェイコブ&コー初のトゥールビヨン搭載モデル「クエンティン」が誕生しました。世界初となる31日間のロングパワーリザーブを備えた縦型ムーブメントに、7つの香箱(バレル)を直列配置するという革新的な設計。縦長のシリンダー型ケースとサファイアクリスタルによって、内部機構の壮大さが視覚的にも強烈な印象を与えます。
驚くべきことに、このモデルには当初名前がついていませんでした。ある顧客がブティックでこの時計に興味を示し、アラボ氏に名前について尋ねたところ、彼は「保証金を払ってくれるなら、あなたの名前をつけてもいいですよ」と冗談交じりに応じたといいます。顧客はその提案を受け入れ、この時計は「クエンティン」と命名されました。後に映画監督のクエンティン・タランティーノもこの時計を手にし、『ヴォーグ』の表紙で着用したことで話題に。36万ドルから販売されたこのモデルは、アラボ氏の時計作りにおける原点であり、ジェイコブ&コーが本格的な高級時計の世界へ踏み出す転機となりました。
複雑機構を“芸術”へと昇華させる
その後も、ブランドはトゥールビヨンを中心に据えたコレクションを次々と展開。
・複数軸で回転する立体的なトゥールビヨン
・サファイアクリスタル製ケースによる360度の視認性
・ミニッツリピーターやムービングオブジェを取り込んだムーブメント
・宇宙、映画、音楽といった文化的インスピレーションの具現化
単なる高精度を追求するだけではなく、“語りかける時計”、“心を震わせる時計”へと昇華していくその姿勢は、まさにジェイコブ&コーならではの美学でした。特に2014年に発表された「Astronomia(アストロノミア)」は、ブランドの哲学を象徴する存在となります。
「アストロノミア」が時計の常識を覆した
2014年、ジェイコブ&コーが発表した「アストロノミア」は、複雑機構と芸術性の融合によって、高級時計の概念そのものを覆した革新的なタイムピースでした。最大の特徴は、ムーブメント全体が20分で1回転し、その上で4つの構成要素がそれぞれ自転・公転するという、かつてない立体的な構造でした。
この4つとは――
・フライングトゥールビヨン
・回転式の時間表示機構
・手彫りの地球儀(マグネシウム製)
・ジェイコブカット(288面のカッティング。特許取得済み。)を施したダイヤモンド
これらが透明なサファイアケースの中で絶え間なく動き続ける様は、まるで腕元に小さな宇宙を宿しているかのような感覚を与えます。通常、複雑機構はムーブメントの一部として内部に隠れることが多い中、アストロノミアはそれらを前面に押し出し、“見せる”ことに特化。しかもそれは単なる装飾ではなく、動き自体が詩的な美しさを生む“機械芸術”そのものでした。
このモデルは、時計を「時を知る道具」から「感動を生む作品」へと昇華させ、従来の高級時計が持っていたクラシカルな価値観に新たな視点を投げかけました。また、アートやファッション、テクノロジーの分野に通じる新たな富裕層の心を掴み、「次世代の象徴」として瞬く間に世界中の注目を集める存在となりました。アストロノミアは、ジェイコブ&コーが掲げる「不可能を可能にする」という信念を象徴する作品であり、その後に続く革新的なコレクション群の礎となったのです。
そしてアストロノミアは現在も「アストロノミア ソーラー」や「アストロノミア レボリューション」など、多彩なバリエーションとして脈々と受け継がれ、進化を続けています。
さらにこのコレクションは、2022年に民間宇宙飛行に同行し、“世界で初めて宇宙へ行った3軸トゥールビヨン搭載時計”として、新たな歴史を打ち立てました。アストロノミアは今もなお、地上にとどまることなく、宇宙をも視野に入れた革新の象徴であり続けています。
技術、デザイン、そして物語性
ジェイコブ&コーの複雑機構には、必ず“ストーリー”があります。それは機構自体の革新性だけではなく、それぞれのモデルに込められたテーマ性、ストーリーテリング、感情を揺さぶる力に満ちています。機械の精度に美を、構造にロマンを、そして時に遊び心を加える――それがジェイコブ・アラボの時計哲学です。
“不可能”を可能にするブランドへ
「We make the impossible possible.」
――誰も想像すらしなかった時計を創り出すという信念は、この時期に確かな輪郭を得ていきました。ジュエラーとしての起源に誇りを持ちながら、複雑機構の世界で唯一無二の存在となる。ジェイコブ&コーは、ここで“ジュエリーウォッチブランド”という枠組みを超え、世界でも類を見ないハイコンプリケーションの先駆者として名乗りを上げたのです。
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【Jacob&Co. STORIES】Vol.4:ブランドの現在地
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【Jacob&Co. STORIES】Vol.1:ブランドの原点
【Jacob&Co. STORIES】Vol.2:ブランド黎明期
【The Latest|新たな一歩】
ジェイコブ&コーは、絶えず進化を続けています。ここでは、Jacob&Co.の最新の動きをお届けします。
ビリオネア ジュエリーカード
世界で150名限定、富裕層のために創られた超プレミアムなペイメントカード。ダイヤモンドを1200粒以上セッティングした圧巻のマスターピース「ダイヤモンドカード」、気品あふれる「ゴールドカード」、洗練されたオープンワークが魅力の「スタンダードメタルカード」の3種を展開。F1パドッククラブやファッションウィーク、アカデミー賞など世界的VIPイベントへの招待をはじめ、ラグジュアリーホテルでの特別待遇、ケニアのビリオネアリゾートでの無料滞在、ジェイコブ&コー店頭商品の優待購入など、唯一無二の特典が付帯。24時間対応の専属コンシェルジュサービスも備え、真のラグジュアリーライフをサポートする、選ばれし者だけのステータスです。
【ジェイコブ&コー】
1986年に設立。当初は高級ジュエリーを取り扱い、宝飾業界で高い地位を確立し、2002年に時計業界へ本格的に参入しました。世界中のセレブリティを中心に一世を風靡したファイブタイムゾーンウォッチから始まり、これまで不可能と言われてきた複雑機構「アストロノミア」、「ツインターボ」、「ブガッティ シロン」などの開発に成功し、時計業界に技術革新を起こし続けています。現在、ジェイコブは超高級車メーカー「ブガッティ」やサッカー界のスター選手「クリスティアーノ・ロナウド」などとパートナーシップ契約を結び、「不可能を可能に」というコンセプトのもと革新的な作品を生み出し続けています。スイス最高峰の時計製造技術と宝飾業界で培った高い芸術性とノウハウを兼ね備え、時計業界の最先端を行くブランドとして、世界中で多くのファンを魅了し続けています。
【日本公式HP】
https://jacobandco.jp/
【日本公式Instagram】
https://www.instagram.com/jacobandco_japan/
▼ジェイコブ&コー銀座ブティック
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