パリのオートクチュール・ウィークより招待される日本唯一のブランド YUIMA NAKAZATO。2025年2月3日(月)より六本木ヒルズ森タワー52階 東京シティビューにてエキシビションを開催。15周年を迎えたYUIMA NAKAZATOによるクチュールを超えたクチュールの世界へ。
2009年のブランド設立以来、ファッションにおける伝統と革新、洋の東西、人類の過去と未来が交錯する「いま」と真摯に向き合い、独創性を発揮し続けるYUIMA NAKAZATO。2016年からは、パリのオートクチュール・ウィークにて作品の発表を続ける日本唯一のファッション・ブランドとして、世界中の美的感性と知性を巻き込みながら、断絶したあらゆる対立項を「ファッション」の名の許に止揚している。
独自の歩みを緩めぬまま、YUIMA NAKAZATOは、2024年、ブランド設立15周年を迎えた。ブランド・ヒストリーにおいて大きな節目になるであろうこの時節に公開されたドキュメンタリー映画『燃えるドレスを紡いで』は、ファッション・ビジネスの内に致し方なく生まれた欠陥を中里唯馬が直視し、葛藤する様を捉え、コレクションの舞台裏とともに、大量生産、大量消費によって埋め尽くされた脆く危うい「いま」をわたしたちに突きつけた。時を同じくして、中里は、古典オペラの現代的意義を問うかのような、挑戦的演出による新解釈『イドメネオ』の衣装を担当した。そこで中里が提示した、古代ギリシアと未来のクロスポイントとしての「いま」を具現化した美学は、古き良きオペラがいまだに同時代性を有する総合芸術たりうる事実をわたしたちに知らしめた。さらに、それらの活動と並行して、現在も開催中のフランス、カレーの〈カレー・レース・ファッション美術館〉での初の単独回顧展《Beyond Couture》は、YUIMA NAKAZATOが獲得したファッション・コンテクストにおける唯一無二の地位をわたしたちに明示している。
《Beyond Couture》と銘打たれたYUIMA NAKAZATOの15年は、まさに、クチュールを超えるための、手技を重んじながらもアナクロニズムに陥いることなく、最先端技術の可能性を追求しながらも人間性を失うことのない歩みであった。過去と未来に拘泥するあまりに見失われがちな、過去と未来が交わる「いま」がYUIMA NAKAZATO の創造には息づいている。どちらか一方に偏るだけでクチュールの同時代性が失われてしまう、針先のようでありながら無辺に広がる〈場〉を歩む中里唯馬は、わたしたちの〈世界〉の豊穣のために、クチュールを超越した美学とともに、クチュールのあるべき姿を探求し続けてきた。これからも続くであろう「美しさと持続可能性」という、交わるはずのない二義を両立させようとする歩みそのものがYUIMA NAKAZATOなのだ。
そして2025年、節目に相応しい2024年を経てYUIMA NAKAZATO は、さらなる一歩を踏みだす。そのスタートである2025 SPRING & SUMMERコレクション《FADE ―砂漠が語る宇宙と巨大ナマズの物語は衣服に宿るか―》で中里唯馬は、コレクションのインスピレーションのひとつでもあるエジプトの白砂漠を移動するなかでアクシデントに見舞われた。その際、中里の胸中で、巨大ナマズの神話についての妄想が膨らみ、慄きが生まれた。そこで中里は、物語と衣服の関係について想い至る。また、最新コレクション《FADE》に至るキャリアのなかで「人間の美しくあろうとする尊厳」に触れ、機能性が偏重される現代にありながら「装飾性の価値を改めて追求する」と中里は意を新たにした。もちろんこの志は、モードの初期衝動への単なる回帰ではない。失われた機能に替わるのは、「いま」ここでしか成立し得ない同時代的対話から生まれる物語であろう。物語とファッション、いずれも人間を人間たらしめる大きな特徴であり、これまでも中里は、全ての感覚をもって、あらゆる事象のナラティブを捉え、YUIMA NAKAZATOにしか語りえぬ物語をクチュールに編み込んできた。しかし、これからは、わたしたちも中里が抱える大きな課題を共有し、YUIMA NAKAZATOのクチュールに物語を託さなくてはならない。
2025年2月3日に開幕する《YUIMA NAKAZATO 展 ―砂漠が語る宇宙と巨大ナマズの物語は衣服に宿るか―》は、中里とともにわたしたちが語り部になるための示唆に富んだ、意欲的なエキシビションであり、YUIMA NAKAZATOが迎える新たなフェイズにわたしたちが参加するためのまたとない好機だ。本エキシビションは、YUIMA NAKAZATOの15年の集大成でもある『イドメネオ』を軸に、そこから派生したコレクション〈UTAKATA〉〈UNVEIL〉を紹介するパートを導入に、《FADE》コレクションの世界観をメインに据えたふたつのパートからなる。そこでわたしたちが体験するYUIMA NAKAZATOの「美しさと持続可能性」の両立という難事を遂行する美的創造が、セイコーエプソン株式会社とのパートナーシップの賜物であることにも注目したい。
最後にもうひとつ。中里唯馬が提示する物語は、いずれも、わたしたちの想像力を刺激して止まない中里との対話への誘いであるとすると、《YUIMA NAKAZATO 展》は会場だけでは完結しない。日本資本主義社会の栄枯盛衰が刻み込まれた六本木が本エキシビションの舞台であることの意義を、わたしたちは中里と共有することになる。六本木の持つナラティブとYUIMA NAKAZATOのナラティブから生まれる新たな物語の語り部はわたしたちなのだ。
YUIMA NAKAZATO展
―砂漠が語る宇宙と巨大ナマズの物語は衣服に宿るか―
会期:2025年2月3日(月) – 2025年2月16日(日)
開館時間:10:00 – 20:00(最終入館 19:30)
会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
Webサイト:https://www.yuimanakazato.com/exhib_2025.html
主催:株式会社 YUIMA NAKAZATO
協賛:セイコーエプソン株式会社
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、在日スイス大使館
セイコーエプソン株式会社とYUIMA NAKAZATOは、2022年よりパートナーシップを結び、継続して一人一人の多様なニーズに応える高品質な衣服づくりの実証実験、開発を通じて、ファッションの未来を切り開く様々な取り組みを実施してきた。本展は、その成果をより多くの皆様にご覧いただく機会でもあります。
中里 唯馬 プロフィール
1985年生まれ。2008年、ベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を卒業。2016年7月にはパリ・オートクチュール・ファッションウィーク公式ゲストデザイナーの1人に選ばれ、現在に至るまで日本人として唯一、パリ・オートクチュール・ファッションウィークにてコレクションを発表し続けている。近年では、単独回顧展“BEYOND COUTURE”がフランスの公立美術館であるカレー・レース・ファッション美術館にて開催された。アメリカのボストン・バレエ団やスイスのジュネーブ国立劇場等で行われるオペラやバレエ等、舞台芸術の衣装デザインを行う。また、自らが発起人となり、未来を担う次世代のクリエイターのためのファッション・アワード FASHION FRONTIER PROGRAMを創設。
Official Instagram account:@yuimanakazato
Official brand website:yuimanakazato.com